『キートンの隣同志』は 『衝撃の瞬間系』映画である!

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「ジャッキー・チェンのようなアクション映画を探してる」
「テレビの『衝撃の瞬間系』が好きだ」
という人に向けて、今回の映画を紹介する。

『キートンの隣同志』は、驚天動地のアクション満載のコメディ映画なのだ!

『キートンの隣同志』は 『衝撃の瞬間系』映画である!

『キートンの隣同志』(1920年、原題:Neighbors、『隣同志』とも)は、バスター・キートンが手掛けた4本目の短編映画。

『キートンの隣同志』が3本目で、次の『キートンのスケアクロウ』を4本目とする説もある。今回はThe International Buster Keaton Society (通称Damfinos)の資料に基づき、『キートンの隣同志』を4本目として紹介する。

監督: Buster Keaton and Edward Cline
公開日:1920年12月22日
上映時間:18分

配役:
Buster Keaton: The Boy(男の子)
Virginia Fox: The Girl(女の子)
Joe Roberts: Her Father(女の子の父親)
Joe Keaton: His Father(男の子の父親)
Eddie Cline: The Cop(警察)
James (or Jack) Duffy: The Judge(判事)
The Flying Escalantes: The Boy’s Friends(男の子の友人)

本作ではバスターの父親、ジョー・キートンが主人公の父親役で出演している。このような配役は、他の作品では観られない。

あらすじ

キートン氏と恋人は塀を隔てたお隣さん同志。息子と娘は恋仲だが、親同士は犬猿の仲だったりする。

両家の喧嘩があまりにヒドイので、判事が平和協定を結ぶよう命令するハメに。この機会を利用してキートン氏は、恋人と結婚しようとするのだが…

!!!!!以下、ネタバレありです!!!!!

『キートンの隣同志』のここを見逃さないで!!

映画の最終盤での、3人肩車は圧巻。

キートンが親の眼を盗んで恋人に会おうとして、友人2人に肩車してもらう。そしてその状態で隣の家に行く。

さらに恋人の父親に見つかったキートンは、恋人を肩に担いだまま肩車状態で逃げ出すのだった。

なお、キートンを肩車している友人2人はThe Flying Escalantesの2人だと思われる。The Flying Escalantesとは、当時のサーカス団Escalante Brothers Circusのアクロバット隊らしい。

解説

英語や英語圏文化を勉強中の人でも楽しんでもらえるよう、ここでは字幕や背景知識を解説する。

字幕

※ 出典が無い場合は、ジェリーわたなべ独自の訳である。

Her father “I know a better way than that to break his neck.”
His father “He’s my son and I’ll break his neck any way I please.”

女の子の父「そいつの首を折るのに、もっと良い方法を知ってるぞ」
男の子の父「こいつは俺の息子だ!俺の好きな方法で首を折るんだ!」

 

背景知識

フォード車を買ったら怪我をした?

劇中で腕を怪我した父親が「フォード車を買ったからだ」というシーンがある。どうしてフォード車を買うと怪我をするのだろうか。

もしかしたら、フォード車の質が低下していて、事故が多かった可能性がある。

フォード社製の車の代名詞といったら、「T型フォード(Ford Model T)である。1908年に発売された同車は瞬く間に世界中で販売され、1500万台以上が生産された。

しかし『キートンの隣同志』が製作された1920年では、さすがに時代遅れになっていたらしい。

世の中は高級車志向になっているにも関わらず、T型フォードに絶対の信頼を寄せるヘンリー・フォードはモデルチェンジを行わなかった。代わりに徹底的な大量生産による廉価化を推し進めた。

推測になるが、廉価化を強行した結果車の品質が落ち、「欠陥車」の代名詞としてギャグにされてしまったのではないだろうか。

2020/02/18追記
非常に博識な読者さんからコメントをいただいた。それによると、当時のフォード社はそれまでの売り上げが良すぎて社員の緊張感が無くなり、不良品や欠陥品が多かったらしい。また、バスター・キートンとフォード社との間に、何らかの軋轢があった可能性も考えられるそうだ。貴重なコメントありがとうございました!

結婚式のプレゼントに?

結婚式の日、テーブルの上に積まれたプレゼントの中に「How to Box by James Corbett」という本がある。これは何だろうか?

この本の著者James Corbett(ジェームス・コーベット、1866年9月1日 – 1933年2月18日)は、実はボクシングヘビー級の元世界王者。

しかも元銀行員という異質の経歴を持っており、最も分析的なアスリートと紹介されている。

この「How to Box(ボクシングの方法)」が実際に出版されたかは不明だが、理論からのコーベットなら本を書きそうだという意味も込められているのだろう。

せっかくのお祝いの場なのに、物騒な本が置いてある点に笑ってしまう。

James J. Corbett

なお、コーベットの人生は『Gentleman Jim』(1942)という映画になっている。

https://youtu.be/9WGN58nXHlM

なぜ結婚指輪に怒ったの?

指輪交換の時に、恋人の父親が怒って指輪をつぶしてしまったのはなぜだろうか?

それはこの指輪が安物だと気づいてしまったからだ。

恋人の父親が指輪を眺めていると「Straight from Woolworths.(ワーズワースのお店で買ったばかり)」という字幕が現れる。

このウールワースとは、100円ショップの元祖のようなお店なのだ。

このウールワースに始まる100円ショップのお店は「5セント&10セントストア、あるいは5セント&ダイム(10セント玉の俗名)ストアと呼ばれた」(田村明子、2019)そう。

ACMEとは「A Company Makes Everything」の略。低品質の代名詞

安物のフォードを買うし、100均の指輪を買うしで、とにかくケチンボな家に自分の娘をお嫁に出したくない気持ちもわかる。恋人の父親に少し同情してしまうシーンである。

ちなみにこのウールワース、事業が大成功を収めたため、ニューヨークにウールワースビルディングという本社ビルを1913年に建てた。高層ビルのさきがけのような建物で、1930年にクライスラービルができるまではニューヨークで一番高い建物だった。

Woolworth Building

『キートンの隣同志』 を観る

『キートンの隣同志』はパブリックドメインであり、インターネット上で誰でも観ることができる。

https://youtu.be/tM0SeH8rcBg

まだわからないこと

ブログ執筆時点では結局答えが分からなかった点について述べます。ご存知の方がいたら、コメント等をしていただけると幸いです。

なぜ石炭を掘っていたのか?

映画のラストで、判事が地下で石炭を掘っていた。当時は石炭を地下で掘るのが一般的だったのか。まさかそうは思われないので、演出上の都合だったのだろうか。それとも石炭に何か意味があるのか。

オチが荒唐無稽過ぎて、かえって疑問に思ってしまう。

A.ボイラーに石炭をくべてました(2020/02/18追記)

非常に博識な読者さんからコメントをいただいた。どうやら最後のシーンは、ボイラーに石炭をくべている場面だったようだ。地下室への物資運搬口にキートンと彼女が落ち、たまたまそこで判事が作業していたという流れ。ボイラーとは、給湯器だと考えてもらえれば大丈夫である。貴重なコメントありがとうございました!

Jerry’s Final Thought

『キートンの隣同志』には、アフリカ系アメリカ人をネタにしたギャグや当時100円ショップについての知識を前提としたギャグがあり、観る人を選ぶかもしれない。特にアフリカ系アメリカ人のギャグは、観ていて怒り出す人もいる可能性がある。

ただし、際どいギャグが苦手な人でも最後の追いかけっこシーンは観る価値がある。観る人のどんな予想も上回る、過激なアクションがてんこもりだからだ。

★★★★

出典

  • Internet Movie DataBase( IMDB):画像
  • The International Buster Keaton Society:基本情報
  • ALC:訳語
  • YouTube:動画
  • Wikipedia:基本情報
  • Encyclopedia Britannica
  • 江川泰一郎(1991)『英文法解説‐改訂三版‐』金子書房:英文法
  • 田村明子(2019)『ニューヨーカーがダイソーを好きな理由』
  • バスター・キートン&チャールズ・サミュエルズ(1997)『バスター・キートン自伝‐わが素晴らしきドタバタ喜劇の世界‐』筑摩書房:基本情報

 

最後までお読みいただき

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コメント

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