「最近、無目的にインスタやYouTubeを観てしまっている」
「もっと読書したい」
「アウトプットした方がやる気が出るだろう!」
という動機から、読書サークルを立ち上げました。
名前は「これ読んでるよ!」。
子どもが大人に本を紹介するように、参加者に本を楽しく語ってもらいたいという想いを込めました。
課題図書は指定せず、現在読んでいる本を紹介してもらうスタイルの読書サークルです。
過去の開催報告は読書サークル活動まとめをどうぞ。
さて第2回「これ読んでるよ!」を、2021年8月8日日曜日の15~17時に、ZOOM上で開催しました。
参加してくださったのは…
・茶谷ムジさん(Twitter:@chatani_muji)
・collonさん(ジェリーわたなべの大学時代の同級生)
今回の参加者はジェリーわたなべ以外、お子さんがいらっしゃいました。なので、「ついさっき、子供が初めて笑ったよ~」や「最近、『ごめんなさい』を言えるようになりました」等の成長報告から会はスタート。終始子どもたちの元気さに包まれながら、明るい雰囲気で進行しました。
以下では、各参加者が紹介してくれた本&ディスカッションの内容をご紹介!
※著者および編者の敬称は、省略してあります。
①『図解 相手の気持ちをきちんと<聞く>技術』

最初のプレゼンターは、ジェリーわたなべ。最近「聞くこと」について関心を持っている僕は、関連本を複数紹介しました。
→各ページが図解されており、内容をさらいやすい。ほめることを「ほんの小さなプラスに気づき『私は気づきましたよ』と口に出して言ってみる」こと、と説明している点が特に印象的でした。
→数多くの有名人へのインタビュー経験がある著者が、具体的エピソードを挙げながら、インタビュー技術を紹介。取材相手を事前にリサーチすることは、僕も常に心がけています。
→『自由からの逃走』で知られる著者の、心理学者としての側面が前面に出た講義録。『愛するということ』に比べて、内容が専門的です。
→従来のコミュニケーション研究は、話し手に焦点を当てることが多かったです。そこで、聞き手にもフォーカスを当てようという専門書。漫才師、会議のファシリテーターから警察官まで様々な「聞き手」が登場します。
→主に夫婦間における問題例を提示しながら、「なぜ聞くことが大切なのか」、「相手の話が聞けなくなる理由」、「どうしたら聞けるのか」を説明しています。「感情的に反応しそうになったら『Tell me more.(もっと話して)』と言って、まずは相手の話をじっくり聞く」というアドバイスは、僕も早速実践しました。
ブログの取材で何度かインタビューをさせていただきましたが、日常会話と違って、どうしても緊張してしまいます。話し手が話しやすくなるように、まずは自分がリラックスしたいと考えていますが、なかなか難しいです。collonさんからは、「自分が緊張していた方が、かえって相手がリラックスする場合もあったよ」という話を教えてもらいました。
また、「聞き手としてどの程度話し手に関心を持つか」問題もディスカッション。相手に関心を持ちすぎてしまい、話し手から過度に影響を受けてしまうのが僕の悩みです。
参加者の方の職場では、お互いに関心を持ちすぎてしまい依存し合ってしまうケースもあるのだとか。介護や教育のように、自立を目的とする場面では、依存は避けた方が良いはず。興味を持って話を聞きつつも、「私は私。相手は相手」という状態を維持する大切さが語られました。
②『この世界の片隅に』

二人目のプレゼンターは、今回初参加となるcollonさん。最近読み返しているという、こうの史代(2008-2009)『この世界の片隅に(上・中・下)』を紹介してくれました。
登場人物である白木リンのセリフ「人が死んだら記憶も消えて無うなる。秘密は無かったことになる」について、どういう意味なのかを旦那さんと議論しているのだとか。
「2人で過ごす時間が増えると、見たくなかった相手の側面が目に入ってくるもの。その時に2人でその部分を消化することが「絆を強める」ことなのではないか」と、collonさんの意見を語ってくれました。
また、不幸な出来事を淡々と描く本作の描写方法もトピックに。collonさんは双葉社の発行する男性誌『漫画アクション』で、本作が連載されていたことに驚いたそうです。そしてその理由を、「感情的にならずに、淡々と物語を描いた点が男性読者に受けたのではないか」と分析していました。
戦争をどのように描くのかというのは、作品の制作年代も関係していそうです。茶谷さんは吉永小百合主演の1968年の映画『あゝひめゆりの塔』を紹介してくれました。この作品は悲劇のシーンが多いし、一つ一つが時間をかけて描かれていたそうです。
また、こうの史代が表紙イラストを手掛けた作品として、森光子(2010)『吉原花魁日記 光明に芽ぐむ日』と森光子(2010)『春駒日記 吉原花魁の日々』も、茶谷さんが紹介してくれました。両作品とも、実在の花魁である春駒が書いた日記を復刻したものです。
またジェリーわたなべは、戦争を描いた映画として、江戸川乱歩の『芋虫』に影響を受けた若松孝二(2010)『キャタピラー』と、ダルトン・トランボ(1971)『ジョニーは戦場へ行った』を紹介しました。どちらも、戦場で四肢を失った人物が重要な役で登場します。
なお、『この世界の片隅に』を原作にした映画が2本制作されています。
2016年の『この世界の片隅に』と、同作の長尺版である2019年の『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』です。
③『広島第二県女二年西組:原爆で死んだ級友たち』

三番目にプレゼンをしてくれたのは、茶谷ムジさん。権力者ではなく市井に生きる人々の視線から描いた戦争作品に関心があるということで、関千枝子(1988)『広島第二県女二年西組:原爆で死んだ級友たち』をご紹介。
著者の関は、2021年2月に亡くなっています。広島に原爆が落とされた日、同級生とともに建物疎開作業に参加する予定でした。しかし腹痛に襲われたために彼女は生き残り、その意味と向き合わざるを得なくなります。
本作はノンフィクション作家となった関が遺族を訪ね歩き、同級生一人ひとりを血の通った人間として記録した貴重な作品。茶谷さんは自分だったらこの時代にどんな学生として生きていたか、いま育てる娘さんのことを思いながら、もし母親だったらどうだったかとも想像し、涙を禁じ得なかったそうです。
茶谷さんは他にも、歴史の流れに翻弄されながらも懸命に生きる「おしん」も好きだと語っていました。
読書サークルを行った日は、広島と長崎に原爆が落とされた日に挟まれていることもあり、後半2作が戦争に関連した作品。そこで参加者同士で、祖父母からどんな戦争体験を聞かせてもらったかを共有しました。
ジェリーわたなべは、母方の祖父がかつて見せてくれた赤紙を今でも覚えています。工場で働いていた祖父は、出兵する直前に終戦を迎えたのでした。赤紙は赤くない。
実は茶谷さんは、多和田葉子(2017)『シュタイネ』や吉田ルイ子(1979)『ハーレムの熱い日々』を紹介してくださる予定だったそうです。しかしcollonさんの発表を受けて、急遽戦争関連の作品を紹介してくださったのだとか。筋書きの無いライブ感に、僕はとってもゾクゾクしました!!
参加者コメント:茶谷ムジさん

今回も普段触れることのないジャンルのお話を本を手がかりに覗かせてもらいました。有名な作品ですが話す機会の少なかった「この世界の片隅に」が登場し、人々の戦争の記憶について皆さんと話すことができたのはいい機会でした。
次回は9月5日(日)開催

第3回「これ読んでるよ!」は9月5日日曜日の15時から開催予定です。
いつもの読書報告ではなく、課題図書として今村夏子「ピクニック」を扱います。そして残暑厳しい頃なので、『怖い本・不思議な本』についても話す予定です。
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